投資利益率で見るヒット映画

在、ヒンディー語映画の歴代興行収入第一位は「Dhoom 3」(2013年)となっている。国内興行収入だけでも28.4億ルピー、タミル語やテルグ語の吹替版を含めた世界での興行収入は50億ルピーを越える。今年12月5日には日本でも封切られることになっており、さらに数字を伸ばすだろう。

 だが、この数字は制作費や映画の劇場公開までに費やされるその他の諸経費を無視している。もし興行収入10億ルピーを稼ごうとも、制作その他に10億ルピー以上を掛けていたら、赤字なのである。映画の興行的成功を判断する際、収支を照らし合わせて考える必要がある。ちなみに「Dhoom 3」の制作費は12億ルピー前後のようだ。

 

 投資に対してどれだけの利益があったかを示す指標に投資利益率(ROI)がある。利益/投資額×100で算出される。映画業界で考えてみると、興行収入/制作費×100でいいだろう。9月9日付けのタイムス・オブ・インディア紙に掲載の記事によると、過去10年間に公開されたおよそ500本のヒンディー語映画に投資利益率の考え方を当てはめてみたところ、驚くべき映画がトップに躍り出たと言う。それは「Bheja Fry」(2007年)である。ヴィナイ・パータクの出世作で、確かに続編も作られるほどヒットはしたが、都市在住のインテリ層に受けただけで、「大ヒット作」という文脈で語られることはほとんどない映画だ。国内外での興行収入は1億2600万ルピーほど。大した数字ではない。だが、制作費がたった1500万ルピーほどだったことを考え合わせると、投資利益率は739%にもなり、過去10年間でこの映画ほど高い利益率を上げた映画は存在しないことになる。

 以下が、2004年-13年に公開されたヒンディー語映画の投資利益率トップ10である。

  1. Bheja Fry (2007年) 739%
  2. Aashiqui 2 (2013年) 629%
  3. Lage Raho Munnabhai (2006年) 548%
  4. Vivah (2006年) 518%
  5. Vicky Donor (2012年) 513%
  6. Malamaal Weekly (2006年) 511%
  7. Taare Zameen Par (2007年) 484%
  8. 3 Idiots (2009年) 472%
  9. Chak De! India (2007年) 466%
  10. Jaane Tu… Ya Jaane Na (2008年) 461%

 純粋に興行収入のみで映画の成否を見た場合、「3カーン」を始めとするスター・パワーの威力はすさまじいものがあるが、投資利益率という観点から見直してみると、スターの存在感が薄れることに気付く。例えば、トップ10の中で「3カーン」映画と言えるのは、第7位の「Taare Zameen Par」、第8位の「3 Idiots」、第9位の「Chak De! India」のみである。それぞれ主演は順にアーミル・カーン、アーミル・カーン、そしてシャールク・カーンである。サルマーン・カーン映画は1本もない。他に、第3位のサンジャイ・ダット主演「Lage Raho Munnabhai」と第4位のシャーヒド・カプール主演「Vivah」辺りが一応スターが主演していると言える映画で、他は新人・若手の俳優か、スターに分類されない俳優が主演の映画である。

 やはり、大スターを起用したり、マルチスター映画だったりすると、スターのギャラで予算が圧迫され、どうしても高い投資利益率は出なくなるのだろう。逆に言えば、スターを起用しながら高い投資利益率を実現した映画は、その他のヒット映画に比べてさらに価値があると言える。

 そのような観点から上記のトップ10の監督を見てみると、「Lage Raho Munnabhai」と「3 Idiots」を監督したラージクマール・ヒーラーニーの才能が際立っている。両作品で別のスターを起用しながら、どちらも興行収入で大成功を収めている上に、投資利益率でも優れた結果を残している。今更改めて言うまでもないのだが、ヒーラーニー監督はヒンディー語映画界トップの監督であることがこのデータからも裏付けられた形となった。

 投資利益率で映画の成功を評価すると、必然的にいい作品が残るという効果もある。例えば第5位の「Vicky Donor」は非常に優れた映画であるが、低予算かつスター不在のため、興行収入のみで映画を上位順に並べた場合にはなかなか表に出て来ない作品だ。だが、投資利益率ではキチンと結果を残しており、過去10年間の映画の中でもこうやって際だったポジションを自ずと確保している。

 もちろん、興行収入で映画を評価することも重要なのだが、今後は違った観点からも映画の成否を見極める傾向が生まれて行くのではなかろうか。

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