日本のインド料理レストラン2014-15

本国内を旅行する際、気になるのは旅先においしいインド料理レストランがあるかどうかということである。昨年、この時期に日本のインド料理レストラン2013-14という記事を書いたが、その続編として今年(2013年4月~2014年3月)実際に行って食べてみて印象に残っているインド料理レストランをピックアップしてみたい。あくまでインドに味覚を置いて来た者が選んだインド料理レストランなので、インドを知らない日本人の舌に合うかどうかは保証できない。

 

東京

■エリックサウス
http://www.erickcurry.jp/

Eric South

 この1年間、もっと足繁く通ったインド料理レストランである。その理由は味と立地にある。エリックサウスは南インド料理レストランで、ミールス中心のメニューとなっている。つまり米中心の布陣だ。そうなると米の質が重要になる。エリックサウスでは日本米も使っているが、インドの高級米バースマティーも惜しげ無く使っている。また、一般的なインド料理レストランだとランチメニューは味が落ちることが多く、ディナータイムはバースマティー米を使うがランチタイムは日本米ということもあるのだが、ここはランチタイムでもちゃんとバースマティー米を使用していて、好感が持てる。おかず類でも本場の味が極力再現されている。ミールスではサーンバール、ラサム、ライスがお代わり無料なのもありがたい。これだけ本格的な南インド料理レストランなのに、シェフは日本人だ。日本ならではの食材を使った日印折衷の料理にも挑戦している。

 エリックサウスが位置する東京駅八重洲口は南インド料理レストランの激戦区だ。ダクシン、ダバ・インディアなどの競合店が軒を連ねている。その中でエリックサウスの強みは、東京駅から地下街を通って地上に出ることなくアクセスできる点である。雨の日や冬などには強力なアドバンテージとなる。また、店内はカウンター主体となっているため、一人でフラッと立ち寄りやすいのも密かに高得点だ。おかげで、東京出張の帰り、新幹線に乗る前にエリックサウスで夕食を食べるというパターンが多くなった。東京で一番おすすめしたいインド料理レストランである。

■アーンドラ・キッチン
http://www.andhra-kitchen.com/

アーンドラ・キッチン

 近年、東京を中心に南インド料理レストランの数が増えて来ており、一種のブームとなっているが、その第一号を自称しているのが御徒町駅近くにあるアーンドラ・キッチンである。イドリーやドーサなどのスナック類から始まり、各種ミールスがあり、北インド料理に分類されるタンドゥール料理まであって、インドによくある総合インド料理レストランと言った感じだ。まだランチでしか行ったことがないが、ランチからインディカ米(お代わり自由)を出してくれていたのが嬉しかった。写真はマサーラー・ドーサのセットだが、十分においしかった。ディナー・メニューではドーサにもいろいろ種類が用意されていて、この点でも本場っぽい。ただ、自分の中ではドーサはランチに最適の料理であるため、ランチメニューに各種ドーサを充実させてもらえたらもっと入りやすくなると感じた。

■ケララの風Ⅱ
http://hwsa8.gyao.ne.jp/kerala-kaze/

ケララの風

 JR大森駅西口から南へ数分下った商店街の一角にある。これも南インド料理レストラン。ランチのみ営業で火・水は休業日、メニューはほぼミールスのみという、客を選ぶ形の営業形態だが、味はなかなかのもの。本場の風味を活かしつつ日本人向けにマイルドにした感じだ。全品お代わり自由なのもポイントが高い。米はインディカ米を使用。メニューの詳細をウェブサイト上および店頭でひとつひとつ解説しており、親切だ。

八潮

■カラチの空
埼玉県八潮市中央1-7-11 三木ビル
080-4087-7292(オーナー携帯)
年中無休
☪ハラール

カラチの空

 知る人ぞ知る、埼玉県八潮市はパーキスターン人が多い町である。中古車貿易が盛んな影響であるらしい。日本の中古車市場においてパーキスターン人のプレゼンスは大きいのである(参照)。それに伴って、八潮市にはおいしいパーキスターン料理レストランがあるとの噂だった。秋葉原からつくばエクスプレスに乗って八潮まで行ってみたが、パーキスターン料理レストランが密集しているのは八潮市役所の近くで、駅からさらにバスに乗らなくてはならない。自動車で行くことを前提とした立地である。

 八潮市役所付近にはいくつかのパーキスターン料理レストランがあるが、カラチの空というレストランに入った。近所のパーキスターン人の憩いの場という感じで、レストランというよりも食堂に近い。メニューはウルドゥー語で書かれており、本場感が溢れている。近所にはシェフがネパール人になってしまったパーキスターン料理レストランもあるようなのだが、カラチの空ではちゃんとパーキスターン人シェフが料理を作っている。

 売りはインド・イスラーム系の肉料理の数々だ。ニハーリー、パーヤーなどもいいのだが、一番のおすすめはハリームである。肉、小麦、豆などを長時間煮込んで作られたシチューで、インドでは祭日などのハレの日に食べられるご馳走だ。日本の通常のインド料理レストランではなかなか見掛けない。ここで食べる料理はまず間違いがないと断言できる。当然ハラールである。

 なお、帰りはオーナーが自ら駅まで自動車で送ってくれた。こんな飛び切りの親切さもパーキスターン料理の魅力の一部である。電話をすれば駅まで迎えに来てくれるとも言っていた。

神戸

■アリーズ・キッチン
http://www.aliskitchen.jp/
☪ハラール

アリーズ・キッチン

 大阪は心斎橋にある名店アリーズ・キッチンの二号店が三宮にオープンした。一号店は既に昨年の記事で紹介しており、その後も大阪に行くたびに通っている。

 神戸の二号店も、一号店と同じく、パーキスターン系カナダ人オーナーによる、インド、パーキスターン、アラブ系料理のレストランである。アリーズ・キッチンのビリヤーニーは日本ビリヤニ協会から「日本一おいしい」と認定されており、その味を神戸でも味わえるようになった。昔から在日インド人コミュニティーの中心地であり、今でもインド人が700人ほど住むという神戸では、インド料理レストランも多いのだが、その中でも安定しておすすめできるレストランだ。ハラールなので、イスラーム教徒も安心である。

■クスム
兵庫県神戸市中央区山本通2-12-21 異人プラザ 203
078-221-0229
年中無休

クスム

 神戸に数あるインド料理レストランの中でも、あらゆる意味で一番インドっぽいのがここクスムかもしれない。雑貨・食材店を兼ねていて、店内にはインド食材などが置かれているため、店の中に入るとスパイスの匂いが充満している。そのおかげで店を出るときには体中が同じ匂いに染まる。表にいくつかメニューは掲げられているが、席に座ると問答無用でターリーを食べさせられることになる。こちらの要望を聞きながら、かつそのとき用意できる料理を適当に出してくれる感じで、こちらがストップの合図を出すまで延々とチャパーティーが出て来る。味は素朴な家庭料理。個人的にはインド留学時代に住んでいた寮の食堂の味を思い出した。万人受けするレストランではないが、本場中の本場のインド家庭料理を体験したい場合は、スパイス臭くなっていい衣服と共に訪れるといい場所だ。

 このレストランは一度火事で焼失しており、数年前に微妙に場所を変えて再オープンした。元々はティワーリーさんという人がやっていたのだが、既に亡くなっており、現在ではシュクラーさんというラクナウー出身の人が運営しているようだ。

【番外】グル・ナーナック・ダルバール
神戸市中央区野崎通2-7
078-221-5886
日曜日のみ

グル・ナーナック・ダルバール

 昨年、「聖者たちの食卓」というドキュメンタリー映画が公開された。この映画ではパンジャーブ州アムリトサルにあるスィク教の聖地ハルマンディル・サーヒブ、通称黄金寺院で毎日参拝者に振る舞われるランガル(共食)の様子を延々と撮り続けていた。このランガルを、気軽にではないが、体験することができるのが神戸にあるスィク教寺院、グル・ナーナック・ダルバールである。新神戸駅方面の野崎通にあり、最寄りのバス停は90系統または92系統の上筒井4丁目だ。

 グル・ナーナック・ダルバールは2階建ての建物で、毎週日曜日正午から2階の広間でキールタン(宗教集会)が行われ、それが終わった後、1階の食堂で大体午後1時からランガルが行われる。自分で皿を持って台所へ行き、各料理を受け取るというシステムだ。料理を作っているのはおそらく日本人で、時々日本人もランガルに訪れるようだが、基本的にはインド人しか来ない。よって、味も完全にインド人向けである。唯一残念なのは日本米を使っているところだが、これはコストの問題であろうか。寄付金は受け付けているが、原則無料である。やはりマナーとしてキールタンから参加してランガルの食事を楽しむべきであろう。キールタンではスィク教の習慣に従って頭を布で覆わなければならないが、布は貸してもらえる。レストランではないが、日本にいながらインドなひとときを味わえる貴重な場所だ。

豊橋

■ポカラ豊橋岩田店
http://pokhara-group.com/

ポカラ

 最後に地元豊橋のインド料理レストランをひとつだけ紹介する。豊橋にもいくつかインド料理レストランがあるのだが、ほとんどがネパール人シェフのインド料理レストランだ。だからどうしたという訳ではないのだが、ネパール人によるインド料理レストランはなぜか日本人の味覚に迎合する傾向が強く、本場の味を求める者にとっては物足りないことが多い。

 豊橋のインド料理レストランの中でも勢いがあるのがポカラ・グループのレストランだ。その名の通り、ネパール人によるインド料理レストランである。この辺りではナーンの亜種が異常に発達し、ナーンの菓子パン化が進んでいるのだが、その中でもハニーチーズ・ナーンを発明したと自称しているレストランである。真偽の程は定かではない。

 ポカラは現在豊橋に2店ある他、近隣の三河地域に数店舗を出していて、人気がある。その中でもよく行くのは豊橋岩田店である。豊橋駅から市電に乗り、井原駅または運動公園前駅で降りて5分ほど歩いたところにある。

 なぜポカラを紹介するかというと、ここではダール・バートが食べられるからだ。ダール・バートは豆カレーと米を中心としたネパールの定番料理である。意外に本格的なダール・バートをメニューに用意しているインド&ネパール料理レストランは少ない。以前まではここでもダール・バートを食べるために4名以上の同時注文かつ数日前の予約が必要だったが、最近レギュラーメニューに組み込まれ、いつでも気軽に食べられるようになった。ランチではダルバート・ランチ、ディナーではダルバート・セットになる。米はタイ産のジャスミンライスだ。ダール・バート以外では、ネパール風蒸し餃子のモモもおいしい。ネパール人のレストランなので、ネパール料理を食べるのが一番理に適っている。

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2015年3月30日 | カテゴリー : ブログ | 投稿者 : arukakat