新時代のカルワー・チャウト

る10月22日はカルワー・チャウトであった。我が家ではインドから英字紙タイムス・オブ・インディアが2-3日遅れで届くため、今になってカルワー・チャウトの記事を読んでいる。

 カルワー・チャウトとは、カールティカ月黒分4日に祝われるヒンドゥー教のお祭りである。ダシャハラー祭とディーワーリー祭のちょうど中間くらいに来る。カルワー・チャウトの日、既婚の女性は日中断食し、夫の健康と長寿を祈る。月が出るまで断食を破ってはいけないという、いじらしい掟があり、ヒンディー語映画でも好んで採り入れられる、インド独特の習慣である。

 そのカルワー・チャウトも時代の変遷に従ってだいぶ変わって来ているようだ。

 

 10月21日付けのデリー・タイムスに、カルワー・チャウト専用アプリがいくつかリリースされているとの記事を見掛けた。早速その内のひとつ、iKarvaChauthを、有料ではあったが、ダウンロードして使ってみた。

iKarvaChauth

iKarvaChauth

 このアプリの最大の特徴はチャルニー(篩:ふるい)機能が充実していることだ。カルワー・チャウトの日、日中断食を続けた女性は、チャルニーを通して月を見、次に夫の顔を見て、断食を破る。カルワー・チャウトでもっとも美しい場面であるが、チャルニーがないと話にならない。しかし、いざチャルニーがなくても、このアプリさえあれば、女性たちは断食を破ることができるという訳だ。また、チャルニーをフレームにした写真を撮影したり、メモリーに保存されている夫の画像を呼び出して夫の顔を見たことにしたりするオマケ機能も付いている。

 しかしながら、このアプリで一番感心したのは、カルワー・チャウトの豆知識が充実していたことである。カルワー・チャウトの起源であるヴラト・カター(断食の物語)が入っている他、本来のカルワー・チャウトとはどのようなものだったかについても書かれている。

 冒頭で述べたように、現在カルワー・チャウトは既婚の女性が夫の健康と長寿を祈る祭りになっているが、元々は違ったらしい。この祭りは、夫の家に嫁いで来た新婦が、その家の女性たちと親睦を深めることを目的として祝われていたものだと言う。カルワー・チャウトは、女性だけが断食を強いられるため、よく父権社会的だとか男尊女卑だとか批判をされるのだが、元来はそういう性格はなかったものと思われる。インドには10年以上住んだが、いやはやまだまだ知らないことがたくさんあるものだ。驚いた。

 さて、翌日、カルワー・チャウト当日となるが、その10月22日付けのデリー・タイムスにも興味深いカルワー・チャウト記事があった。まず、最近はヒンディー語映画の影響などで、独身の女性もボーイフレンドのためにカルワー・チャウトに断食をする習慣が広がっているとのことだが、それはそれほど新しいトレンドではない。それよりも目から鱗だったのは、なんと最近は男性までもがカルワー・チャウトの日に断食を始めている、という情報であった。

 男性たちが断食を始めた経緯は様々だ。例えばカラン(仮名)は過去4年間に3人のガールフレンドのためにカルワー・チャウトの断食を行ったと言う。その理由はなかなか面白い。女性たちは口論になると、とかく「あなたのために断食までしたのよ」と、まるで鬼の首を取ったようにわがままを押し通そうとする傾向にある。ならばそれを逆手に取って、男性の方も断食をすることで、女性たちのその屁理屈を封じ込めようというのだ。実際にカランは、ガールフレンドと別れるときに「君のために断食までしたんだぞ」という捨て台詞を使ったらしい。

 上のは男性のイニシアチブの例であるが、女性側が夫にカルワー・チャウトの断食を強要する例もあると言う。カヴィター(仮名)は元々カルワー・チャウトを信じていなかったが、嫁ぎ先が信心深い家庭であったため、カルワー・チャウトをするよう圧力を掛けられた。だが、彼女の理論では、この祭りは女性が1日中家の中にいるのが当たり前だった時代に行われていたもので、女性も外で働くようになった現代にはフィットしない。もし女性が断食をしないといけないのなら、男性も同じように断食しなければならない。カヴィターはそう主張し、とうとう夫も根負けして、一緒に断食をするようになったと言う。

 インドは世界でも有数のお祭り大国であり、伝統的なお祭りが多く残っている。残っているだけでなく、それらが熱狂的に祝われる。だが、カルワー・チャウトの例から、それらも時代と共に新しい技術や考え方を吸収しながら変遷し続けていることが分かる。変わらないためには、変わり続けなければならないのだ。

 ふと興味が沸いて、日本の伝統的なお祭りを祝うのに便利なアプリはないか捜してみた。正月、節分、ひな祭り、端午の節句、七夕、お盆などなど・・・。それらのお祭りをネタにしたゲームはあれど、iKarvaChauthのような発想で作られたアプリはちょっと見当たらなかった。この辺りが、インド人と日本人の決定的な違いかもしれないと感じた。

Print Friendly, PDF & Email

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です