Kedarnath

インド各地にヒンドゥー教の聖地があるが、ヒマーラヤ山脈に点在する聖地はアクセスの悪いものが多く、それらへの巡礼の旅は格別な意味を持っている。ウッタラーカンド州のケーダールナート寺院は、ヒマーラヤ山中にある聖地のひとつで、しかも最もアクセスが悪い聖地でもある。「マハーバーラタ」の主人公パーンダヴァ5兄弟によって建立されたとされる由緒あるシヴァ寺院で、ガンガー河の支流であるマンダーキニー河の上流に位置する。ケーダールナートまで自動車が通行可能な道路は通じておらず、麓の町ガウリークンドから6時間は登山をしなければならない。ケーダールナートを含むウッタラーカンド州は2013年6月中旬に集中豪雨に見舞われ、ケーダールナートを大洪水が襲った。州全体では5,000人以上が犠牲になったとされている。このときの出来事を背景にした、ヒンドゥー教徒の女性とイスラーム教徒の男性のロマンスが、ヒンディー語映画「Kedarnath」である。2018年12月7日に公開された。

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Karwaan

多様な自然と文化を誇るインドは旅をしてこその国であり、ブッダの時代から多くの旅人たちに旅され、愛されて来た。インド映画界も自国のそんな魅力を存分に活用して来ており、風光明媚な光景で撮影を行ったり、旅情あふれる作品を生み出したりして来た。2018年8月3日公開のヒンディー語映画「Karwaan」も、そんな1本である。

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Fanney Khan

多くの人が認める通り、インド映画の最大の特徴は歌と踊りである。そうであるが故に、歌や踊りがいかにストーリーと調和し、ストーリーを盛り立てているかは、重要な評価ポイントとなる。優れた歌や踊りでクライマックスを迎える映画は高評価だ。2018年8月3日公開のヒンディー語映画「Fanney Khan」は、歌に焦点を当てた作品である。ベルギー映画「Everybody’s Famous!」(2000年)のリメイクである。

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The White Tiger (USA)

インドにおいて、中産階級以上の家庭が使用人を雇用するのは普通のことである。カースト制度の影響で仕事も細分化しており、運転手、料理人、掃除人、子守など、雇うとなったら複数の人を雇うことが多い。主人と使用人の関係について描いた「Sir」(2018年/邦題:あなたの名前を呼べたなら)という映画があったが、ストーリーはどうも現実的ではなかった。だが、イラン人監督ラーミーン・ベヘラーニーによる米国映画「The White Tiger」は、かなりインドの主従関係を正確に描いた映画である。2021年1月13日に劇場公開され、同年1月22日にNetflixで配信されるという、変わったリリースのされ方をしている。原作は、インド人作家アラヴィンド・アディガの同名小説(2008年)である。

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Street Dancer 3D

インド映画というと「歌って踊って」というイメージが強いが、本当に歌って踊ってばかりの映画というのは実は珍しい。必ずストーリーがあって、そこに歌と踊りが混ぜ込まれる。だが、振付師出身レモ・デスーザ監督の「ABCD」シリーズは、本当にダンスが中心の映画だ。1作目の「ABCD: Any Body Can Dance」(2013年)は、プラブデーヴァ以外ほとんどスターが出演していなかったにもかかわらずヒットし、2作目の「ABCD 2」(2015年)ではプラブデーヴァに加えてヴァルン・ダワンとシュラッダー・カプールが出演して大ヒット。そして2020年1月24日に、前作と同じヴァルン・ダワンとシュラッダー・カプール主演で「Street Dancer 3D」が公開された。題名が変わったのは、プロダクションの変更に伴うタイトル使用権問題のためである。

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The Tashkent Files

インド独立後最初の首相はジャワーハルラール・ネルーで、彼は1947年から1964年の死まで首相を務めた。彼の死後、2代目の首相に就任したのが、マハートマー・ガーンディーの忠実な弟子だったラール・バハードゥル・シャーストリーであった。彼は、白の革命(乳業改革)、緑の革命(農業改革)、核開発などを主導し、インドの発展の礎を築いた他、1965年の第二次印パ戦争でも勝利を収めた。だが、パーキスターンと平和条約を調印をするためにウズベキスタン(当時ソビエト連邦)のタシケントを訪れ、そこで客死した。一般に死因は心臓発作とされているが、果たしてそれは真実なのか。シャーストリーの死の真相に迫ったサスペンス映画がヒンディー語映画「The Tashkent Files」である。2019年4月19日に公開された。プロパガンダ映画との批判もある「The Accidental Prime Minister」(2019年)と同じく、2019年の下院総選挙の前に公開されており、その内容は国民会議派にとって非常に不利なものとなっている。

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The Accidental Prime Minister

現在、インドの連邦政府はインド人民党(BJP)とその連立グループである国民民主同盟(NDA)によって運営されており、カリスマ政治家ナレーンドラ・モーディーが首相を務めている。モーディー首相は就任以降、数々の大胆な政策を打ち出しており、彼の強力なリーダーシップと決断力は国民の圧倒的な支持を集めている。国民の熱狂的なモーディー熱の裏には、彼の前に首相を務めた国民会議派のマンモーハン・スィンの影響もあるかもしれない。スィン前政権が、国民会議派のソニア・ガーンディー党首の傀儡であったことは誰もが知るところであった。

 2019年1月11日に公開されたヒンディー語映画「The Accidental Prime Minister」は、マンモーハン・スィンが首相を務めた2004年から2014年までの10年間の中央政治とその間のスィン首相の動向を追った伝記映画である。スィン首相のメディア顧問を務めたサンジャヤ・バールー著の同名の伝記を元に映画化された。この映画は、2019年4月~5月に下院総選挙を控えている微妙な時期に公開されており、政治的な動機に基づいて作られたプロパガンダ映画との批判も強い。

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Suraj Pe Mangal Bhari

時代劇映画というと、中世や近世を時代背景とした映画を思い浮かべるが、とうとう1990年代も時代劇の対象となってしまった。新型コロナウイルス感染拡大に伴う映画館閉鎖明けの2020年11月15日に劇場一般公開(定員50%)されたヒンディー語映画「Suraj Pe Mangal Bhari」は、1995年、都市名がボンベイからムンバイーに変わる頃を舞台としたコメディー映画である。特筆すべきは、別に無理に1995年を時代背景としなくても成り立つような映画だったことだ。それでも敢えて25年前のボンベイを選んだのは、その時代が醸し出す雰囲気を大事にしたかったのであろう。

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Tribhanga

1990年代に活躍した女優の一人にカージョルがいる。「Dilwale Dulhania Le Jayenge」(1995年)や「Kuch Kuch Hota Hai」(1998年)など、時代を代表する映画に出演して来た。1999年にアジャイ・デーヴガンと結婚し、2003年に長女を出産してからは第一線から退き、時々銀幕で姿を見るぐらいになった。ただ、アジャイとのオシドリ夫婦ぶりは業界でも有名で、ブランドアンバサダーとして企業から好印象のため、CMなどへの露出は少なくなかった。2010年には長男も出産している。最近、徐々に映画出演が増えて来ており、2021年1月15日からNetflixで配信開始の「Tribhanga」でも主演を演じている。

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Hichki

学校は誰もが通る道であり、特に若者が主人公のインド映画では、学校が舞台となることは多い。主題が別にあって、学校は単なるロケーションということも少なくないのだが、ヒンディー語映画は教育をテーマにすることも増えて来て、「Taare Zameen Par」(2007年)、「3 Idiots」(2009年)、「Paathshaala」(2010年)、「Stanley Ka Dabba」(2011年)などの映画が作られて来た。2018年3月23日に公開された「Hichki(しゃっくり)」も、学校が舞台の映画であるが、少し変わっている。トゥレット症候群の新人女性教師が主人公なのである。米国の教育者ブラッド・コーヘンの自伝「Front of the Class」(2005年)の映画化権を取得して作られた映画とのことである。

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