Meri Pyaari Bindu

ンド映画と言えば最後は必ずハッピーエンドと言われた時代もあった。「Om Shanti Om」(2007年)では、「ハッピーでなければエンドではない。映画はまだ続く」という名台詞も生まれた。しかし、近年のヒンディー語映画はハッピーエンドを脱却しつつある。ロマンス映画について言えば、主役の男女が最後に結びつかないパターンも生まれて来ている。「Ek Main Aur Ekk Tu」(2012年)辺りが分水嶺になったと記憶している。

 2017年5月17日公開の「Meri Pyaari Bindu」も、ハッピーエンドを脱却したロマンス映画だ。監督は新人のアクシャイ・ロイ。プロデューサーはアーディティヤ・チョープラー。音楽はサチン・ジガル。メインキャストは、アーユーシュマン・クラーナーとパリニーティ・チョープラー。

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Ae Dil Hai Mushkil

ラン・ジョーハルは「Kuch Kuch Hota Hai」(1998年)で監督デビューした後、常にヒンディー語娯楽映画の中心にいた。しかし、業界内におけるその圧倒的な存在感とは裏腹に、彼の監督としての才能には常々疑問を感じていた。シャールク・カーンをはじめとしたオールスターキャストの王道的な大予算型娯楽映画をまとめ上げる力は抜きん出ていたが、デビュー作からなまじっか大成功を収めてしまったためか、繊細な感情の表出や緻密な展開の積み重ねから来る味わい深さに欠けるところがあった。当時としては異例の不倫を扱った映画「Kabhi Alvida Naa Kehna」(2006年)も生焼けの印象を受けた。彼が初めてその殻を破ることに挑戦したのは「My Name Is Khan」(2010年)であったが、病気を使って安易な感動を呼び起こそうというあざとさが鼻についたものだった。「Student of the Year」(2012年)に至っては、なぜ彼がわざわざこのタイミングで自らメガホンを取ってこのような作品を撮ったのか、理解に苦しんだ。

 その一方、2016年10月28日、ディーワーリー週に公開されたカラン・ジョーハル監督の最新作「Ae Dil Hai Mushkil」は、彼の監督としての成長を感じた作品であった。

Ae Dil Hai Mushkil

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Sultan

2008年にクリケットのインディアン・プレミア・リーグ(IPL)が始まって以来、インドでは様々な「リーグ」が雨後の筍のように生まれている。2012年開始のスーパー・ファイト・リーグ(SFL)、2013年開始のプレミア・バドミントン・リーグ(PBL)、2014年開始のプロ・カバッリー・リーグ(PKL)、2017年開始のスーパー・ボクシング・リーグ(SBL)などなどである。日本でJリーグ(1991年)やK-1(1993年)が始まり盛況だった頃と重なる。クリケットが他のスポーツを圧迫しているインドにおいて、果たしてこれらクリケット以外のリーグが全て十分な収益を上げているのか分からないが、少なくとも2016年7月6日公開のヒンディー語映画「Sultan」では、そうでもなさそうなことが示唆されていた。

Sultan

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Udta Punjab

2017年のインディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン(IFFJ)でオープニング作品に選ばれた映画である。邦題は「フライング・パンジャーブ」となった。原題の「Udta」は「飛ぶ」という意味のヒンディー語の動詞「Udna(ウルナー)」の現在分詞を形容詞的に使って直後の名詞「Punjab(パンジャーブ、州の名前)」を形容したもので、「フライング」はその直訳となる。

 実はこの映画の字幕翻訳は僕が行った。邦題について、実は別のものを提案したのだが、却下され、無難なものとなった。

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Lion (Australia)

本では「Lion/ライオン 25年目のただいま」という邦題で劇場一般公開されているオーストラリア映画「Lion」。インドの貧しい家庭に生まれ、5歳の頃に生母と離れ離れになり、紆余曲折を経てオーストラリアで育てられたインド人男性が、Google Earthを駆使して故郷を見つけ出し、25年振りに生母と再会を果たすという物語である。実話に基づいており、その当人サルー・ブライアリーが著した伝記「A Long Way Home」(2013年)を原作としている。

Lion

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Dukhtar (Pakistan)

時期、日本ではインド映画が年に数本、一般公開されるという盛り上がりを見せたことがあったが、そのペースが定着するほどは続かず、最近はだいぶ沈静化しまった。昨年のめぼしい一般公開作品はヒンディー語映画「PK」(2014年)くらいである。むしろ、今まであまり一般公開がなかった、隣国パーキスターンの映画の方に注目が集まっているように見える。昨年日本で公開された「ソング・オブ・ラホール」(2015年)に続き、「娘よ」(2014年/原題:Dukhtar)が一般公開された。

 「Dukhtar」とは「娘」という意味で、英語の「daughter」と同語源の言葉である。監督は女性で新人のアフィヤー・ナサニエル。クエッタ生まれで現在はニューヨーク在住とのことである。キャストは、サミヤー・ムムターズ、モヒブ・ミルザー、サリーハー・アーリフ、アースィフ・ハーン、アジャブ・グル、サミーナー・アハマド、アドナーン・シャー、アブドゥッラー・ジャーン、オマイル・ラーナーなど。

Dukhtar

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Hate Story 2

ンディー語映画界には、執拗にコテコテのB級映画を作り続けている一団がいる。そういう映画を漏れなく観ているとだんだん食傷気味になってくるのだが、たまにヒットを飛ばすのであなどれない。「Hate Story」シリーズは、そんなB級映画の典型だ。プロデューサーに名を連ねるヴィクラム・バットは、正にB級映画の雄である。第1作が公開されたのは2012年4月20日。このときはインドに住んでいたのだが、どうせB級映画だろうと思って観に行かなかった。そうしたら、これまでに3作が作られるほど一定の支持を集めるシリーズになってしまった。今回、「Hate Story 2」を鑑賞するにあたって、YouTubeで公式に公開されている「Hate Story」も併せてチェックした。第1作は、ジャーナリストの若い女性が実業家の御曹司に騙されて徹底的に尊厳を奪われ、娼婦に身を落としてまでして復讐に乗り出すというエロティック・サスペンスであった。

 「Hate Story 2」は2014年7月18日公開。前作の監督はヴィヴェーク・アグニホートリーだったが、今作の監督は新人のヴィシャール・パーンディヤーにバトンタッチしている。パーンディヤー監督は才能を認められて「Hate Story 3」の監督にも抜擢されている。音楽はミトゥン、ミート・ブロス・アンジャーン、アルコ・プラヴォ・ムカルジー、ラシード・カーン。作詞は、アズィーズ・カーイスィー、アルコ・プラヴォ・ムカルジー、クマール、タンヴィール・ガーズィー、ミトゥン。

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Jal

資源はインドにとって非常に大きな問題である。大きな視点から見ていくと、まずインドは隣国と水資源を巡る問題を抱えている。特にインド東北部の生命線であるブラフマプトラ河は中国を源流としており、インドの悩みの種だ。中国はこの河に巨大なダムを建設しており、インドに無言の圧力をかけ続けている。さらに、同じく水資源不足の中国は、ブラフマプトラ河の流れを変えて自国に引き込もうとしているとの噂もあり、そうなればインド東北部は干上がってしまう。この点でインドは中国に対して非常に不利な立場に立たされている。一方、パーキスターンの生命線であるインダス河やその支流の源流はインドにあり、こちらではインドの方が優位に立っている。印パの間ではインダス水資源協定が結ばれており、水資源を外交の道具とすることは避けられているが、最近、パーキスターン主導と見られるテロに悩まされたインドはこの協定の見直しをちらつかせ、パーキスターンに圧力をかけたことがあった。

 国内においても、州をまたいで流れる河川の水資源利用は、州間の政争の火種となりやすい。カーヴェーリー河を巡るカルナータカ州とタミル・ナードゥ州の争い、ナルマダー河を巡るグジャラート州とマディヤ・プラデーシュ州の争い、ヤムナー河を巡るデリーとハリヤーナー州の争いなど、各地で対立が発生している。また、インドでは多くの地域で灌漑がされておらず、モンスーンに頼った乾地農業を行っている。よって、モンスーン期の降雨量によって農作物の生産量が大幅に変動し、農民たちの生活のみならず、経済全体に少なからず影響を与えている。農業、工業また生活用水の水不足解消のために地下水のくみ上げが積極的に行われた結果、地下水位が急激に下がっているという問題もある。環境汚染は言わずもがなで、都市部を中心に河川の汚染は最悪レベルである。

 水資源は、とうとう映画人たちの関心事にもなってきている。例えば、国際的に活躍するインド人監督シェーカル・カプールは、水不足をテーマにした映画「Paani」の制作を発表している。ただ、この作品の撮影は棚上げされており、まだ完成していない。一方、新人監督ギリーシュ・マリクの「Jal」は、インドで2014年4月4日に公開された。グジャラート州にあるカッチ大湿地に住む人々の水を巡る苦闘が描かれた作品であり、水問題をローカルな視点で取り上げているだけだが、映画の最後に「世界の人口のおよそ5分の1が水の不足した地域に住んでいる」「2025年までに世界の人口の約半分、少なくとも35億人が水不足に直面する」といったメッセージが加えられており、明らかにより大きな視点に水不足の問題を引き上げようとする努力が見られる。

Jal

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Qissa (Punjabi)

系社会では家系の存続のために女児よりも男児の方が喜ばれる傾向が強く、特にインドではそれが今でも顕著である。また、インド特有の問題として、婚姻時に花嫁の家族が花婿の家族に多額の持参金を渡す必要がある。単純に言えば、男児が生まれれば収入になるし、女児が生まれれば損失となる。そのような社会構造であるため、女児を厭うのみならず、女児の堕胎や間引きという積極的な行為が長らく行われてきた。結果、男女比に破綻が起こっている。2011年の国勢調査では、男性1000に対して女性が940。自然界の正常な数値は950ほどとされるので、それと比べるとわずかに少ないだけに見える。だが、子供(0-6歳児)の男女比にすると918となり、明らかに少ない数字となる。さらに、これはインド全体の平均値であり、州別に見ると、パンジャーブ州は846、ハリヤーナー州は834と、異常なまでの女児の少なさが浮き彫りとなる。この男女比の問題をもっともセンセーショナルに描いた映画「Matrubhoomi」(2003年)は一見に値する。

 インドで2015年2月20日に公開されたパンジャービー語映画「Qissa」は、男児を尊ぶインド社会の風潮に切り込んだ重厚な作品である。とは言っても女児堕胎の話ではない。3人の女児を既に持ち、「次こそは男児」と期待しながら、4人目の子供も女児で失望した父親が、4人目の子供を男の子として育てるという物語である。監督はジェネバ在住のインド人アヌープ・スィン。過去に作品もあるが、この「Qissa」で国際的に名を知られることになった映画監督である。

Qissa

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Kill/Dil

エンティン・タランティーノ監督の「キル・ビル」(2003年)という映画があったが、それによく似たタイトルのヒンディー語映画が2014年11月14日に公開された。「Kill/Dil」である。監督のシャード・アリーは、時々映画も撮る芸術家ムザッファル・アリーの息子で、過去に「Saathiya」(2002年)や「Bunty Aur Babli」(2005年)などのヒット作を監督している。ライトなノリのラブコメを得意としているといえる。音楽監督はシャンカル・エヘサーン・ロイ、作詞はグルザール。制作はヤシュラージ・フィルムスである。

Kill/Dil

 主演は若手人気男優ランヴィール・スィンとパーキスターン人俳優兼歌手アリー・ザファル。ヒロインはパリニーティ・チョープラー。他に、往年のコメディアン俳優ゴーヴィンダーが重要な脇役で登場する。

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