Ajeeb Daastaans

ヒンディー語映画界では、4本の短編映画をセットにしたシリーズがコンスタントに公開されて来ている。「Bombay Talkies」(2013年)、「Lust Strories」(2018年)、「Ghost Stories」(2020年)である。それぞれ共通した主題――順に「映画」、「欲望」、「幽霊」――に沿って、4人の監督――カラン・ジョーハル、ディバーカル・バナルジー、アヌラーグ・カシヤプ、ゾーヤー・アクタル――が競作をしており、彼らの異なった作風を比較しながら楽しむことができる。2021年4月16日には、Netflixでその4作目となる「Ajeeb Daastaans」が配信開始された。やはり4本の短編映画で成り立っており、今度は「不思議な物語」という意味の題名が示す通り、変わった筋書きの物語が揃っている。前の3本で監督を務めたカラン・ジョーハルがプロデューサーで、監督の顔ぶれは一新されている。




 第1話の題名は「Majnu(マジュヌー)」。監督は「Humpty Sharma Ki Dulhania」(2014年)や「Dhadak」(2018年)のシャシャーンク・カイターン。主演はファーティマー・サナー・シェーク、ジャイディープ・アフラーワト、アルマーン・ラランなど。

 地元の有力者バブルー(ジャイディープ・アフラーワト)は、父親の強制により国会議員の娘リパクシー(ファーティマー・サナー・シェーク)と結婚する。3年後、バブルーの家の運転手の息子ラージ(アルマーン・ララン)がバブルーの助手として働き出す。ラージはロンドンの銀行に勤める予定だったが、バブルーに勧誘され、ロンドンの話を蹴って働くことになった。だが、ラージには内に秘めた計画があった。ラージは、欲求不満なリパクシーと急接近する・・・。このような物語である。

 仲の良くない夫婦の住む邸宅に若者がやって来て、若奥様と不倫関係に陥る物語と思いきや、終盤で意外な展開を迎え、予想も付かない結末を迎える。同性愛者と噂されるカラン・ジョーハルがプロデューサーなだけあって、いきなり第1話から同性愛の要素が入って来る。第1話によって、「Ajeeb Daastaans」の主題が、奇妙なツイストを迎える物語であることが提示される。

 第2話の題名は「Khilauna(玩具)」。監督は「Good Newwz」(2019年)のラージ・メヘター。主演はヌスラト・バルチャー、アビシェーク・バナルジー、ムニーシュ・ヴァルマーなど。

 金持ちの家でメイドとして働くミーナル(ヌスラト・バルチャー)は、貧しく無教養ながらも知恵が働き、金持ちの同情を巧みに引き出しながら、妹のビニーと暮らしていた。路上でアイロン屋を営むスシール(アビシェーク・バナルジー)と恋仲にあった。ミーナルは盗電して電気を利用していたが、ある日それが切られてしまった。ミーナルは、自治会長のヴィノード(ムニーシュ・ヴァルマー)に取り入れば電気をもらえるかもしれないと考え、彼の家でメイドとして働くようになる。ヴィノードの妻は出産するが、生まれたばかりの子どもが殺されるという事件が起き、ミーナルやスシールは逮捕される。このような物語である。

 ヴィノードの家で起こった事件を巡るサスペンス仕立ての短編だが、まずどんな事件が起こったのかが終盤まで明かされず、その点が第一のサスペンスとなっている。そしてもちろん、その事件の犯人も最後の最後まで明かされない。異なる時間軸が複雑に入り交じり、様々なシーンがモンタージュのように散りばめられているため、4話の中ではもっとも凝った編集の短編となっていた。当然、意外な結末が用意されている。

 第3話の題名は「Geeli Pucchi(濡れたキス)」。監督は「Masaan」(2015年)のニーラジ・ガーイワーン。主演はコーンコナー・セーン・シャルマーとアディティ・ラーオ・ハイダリー。

 男ばかりの工場で肉体労働者として働く女性バールティー(コーンコナー・セーン・シャルマー)は、コンピューターの学位を持っており、会計職への転属を希望していた。だが、若くて美しい女性プリヤー(アディティ・ラーオ・ハイダリー)が会計として入社して来たため、彼女の夢は潰えた。バールティーはダリト(不可触民)だったため、カースト制度による差別で会計になれないと考えた。プリヤーはブラーフマンであった。

 プリヤーは、職場の中で唯一の女性であるバールティーに近づいて来た。実はバールティーはレズであったが、プリヤーにも自分と同じものを感じていた。2人は急速に仲良くなり、あるときキスもしてしまう。プリヤーは結婚していたが、レズであったため、夫を愛せずにいた。だが、バールティーの助言を受け入れ、子供を作ることに決める。プリヤーは妊娠し、産休を取得する。このような物語である。

 第1話に続き同性愛を主題にした短編である。それに加え、カースト問題にも触れられる。だが、第3話での意外性は、同性愛でもカースト制度でもない。どちらかというと、これらは目くらましに使われている。全4話の中でもっともよく出来た短編であった。また、コーンコナー・セーン・シャルマーの演技がずば抜けている。元々コーンコナーの演技力は高く評価されて来たが、40歳を越えて、ひとつ次元が上の女優に成長したと感じる。

 第4話の題名は「Ankahi(無言)」。監督はカーヨーズ・イーラーニー。名優ボーマン・イーラーニーの息子で、俳優として「Student of the Year」(2012年)などに出演していたが、監督は本作が初めてのはずである。主演はシェーファーリー・シャー、マーナヴ・カウル、トーター・ロイ・チョードリーなどである。

 ナターシャ(シェーファーリー・シャー)は、難聴の娘を抱え、仕事で忙しい夫ローハン(トーター・ロイ・チョードリー)ともすれ違い気味で、ストレスの多い毎日を送っていた。娘とのコミュニケーションのため、ナターシャは手話を習得していた。ある日、ナターシャは言葉のしゃべれない写真家カビール(マーナヴ・カウル)と出会う。2人は手話で会話をする内に親しくなり、やがて身体の関係となる。ナターシャはカビールに、既婚であることを明かしていなかった。このような物語である。

 言葉はしゃべれるが手話のできる主婦の女性と、言葉がしゃべれず手話でしか意思の疎通ができない写真家の男性のロマンス。不倫でもあるが、ナターシャは既婚であることを隠してカビールとデートを重ねていたため、カビールの立場から言えば、裏切られたことになる。カビールは、人間が嘘ばかり言うのに疲れており、わざと人工内耳を付けていなかった。唇は嘘を付くが、目は嘘を付かない、というのがカビールの信念であった。だが、カビールは、ナターシャと出会ったことで、目も嘘を付くことを知ってしまう。

 意外性、という観点では第4話が一番弱かった。手話で心を通わす男女、というのはヒンディー語映画では珍しかったかもしれないが、結末は十分予想可能なものであった。

 「Ajeeb Daastaans」は、「Bombay Talkies」、「Lust Stories」、「Ghost Stories」の延長線上にあると考えていい、4つの短編映画から構成されたオムニバス形式の映画である。上記3作品に関わって来たカラン・ジョーハルがプロデューサーを務めている点からそれが言える。だが、監督の顔ぶれは変わっている。主題は「奇妙さ」「意外性」である。とは言っても、極端に奇をてらったような作品はなく、どれも上手にまとめられている。特にニーラジ・ガーイワーン監督の第3話が白眉である。

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