Jab Harry Met Sejal

ヒンディー語映画において「ロマンス映画の帝王」の名をほしいままにするイムティヤーズ・アリー監督が現在の地位を確立するきっかけとなったのが「Jab We Met」(2007年)という映画だった。その題名によく似た「Jab Harry Met Sejal」という映画が2017年に公開された。シャールク・カーンとアヌシュカー・シャルマーの共演第3作で、このカップリングのヒット率は非常に高いことからも個人的に注目していた。Netflixで鑑賞した。



 題名の「Jab Harry Met Sejal」とは、英語とヒンディー語のミックスであり、その意味は「ハリーがセージャルに会ったとき」となる。その題名の通り、主人公はハリー(シャールク・カーン)とセージャル(アヌシュカー・シャルマー)であり、ほとんどこの2人を中心にストーリーが進行する。

 ハリーは欧州を訪れるインド人観光客向けのツアーガイドで、セージャルはツアーの参加者の一人だった。セージャルは1ヶ月間のツアー中にフィアンセのルーペーンからプロポーズされ、婚約指輪をもらったが、その婚約指輪をなくしてしまう。怒ったルーペーンは先にインドに帰ってしまい、取り残されたセージャルはハリーを無理矢理連れてツアー中に訪れた都市を巡り指輪を探す。その内に2人の間には恋心が芽生える。そんなストーリーである。

 人物設定はなかなか面白い。ハリーはパンジャービーで実家は農家。若い頃に家を飛び出して欧州にやって来た。ツアーガイドとして身を立てているが、女性関係のトラブルが多く、女性客からのネガティブなフィードバックを何よりも恐れている。一方、セージャルはグジャラーティーで、実家は裕福な宝石商である。法学部出身で、ファミリービジネスの法律顧問をしている。農民気質のパンジャービーと商人気質のグジャラーティーは犬猿の仲とされており、この2つのコミュニティーの縁組はトラブルが付き物というイメージがある。「Kal Ho Naa Ho」(2003年)でもネタになっていた。

 セージャルのキャラは「Jab We Met」でカリーナー・カプールが演じたギートを彷彿とさせる。細かいことを気にしない竹を割ったような性格で、恋愛に対しても極めてサバサバしている。ただ、10年前比べてこのような女性キャラは珍しくなく、むしろスタンダードとなった。実は「Jab We Met」がヒンディー語映画に与えた影響は甚大であり、その後、多くの映画の女性主人公は似たようなキャラとなってしまった。聞いた話では、新人女優のオーディションでは「Jab We Met」のギートの台詞を読ませることが多かったようで、そこで合格する女優たちがギートの二番煎じになっていくのは自然な成り行きであった。よって、残念ながら、セージャルから目新しさを感じなかった。

 イムティヤーズ監督は常に新しい観点から恋愛を捉え直す挑戦をしている。「Jab Harry Met Sejal」では、フィアンセを持つ女性が女たらしのツアーガイドと共に、期間限定の「ガールフレンド」となってヨーロッパを旅し、そこで恋に落ちずに最後、潔く別れられるか、という実験が行われた。当然、ロマンス映画であるため、2人は恋に落ちる訳である。この展開を予想できない観客がいるだろうか。

 また、セージャルはどこかに落とした婚約指輪を探してヨーロッパ中を旅する。指輪は結局見つかるのだが、そのオチも大体予想の範囲内であった。

 最後、セージャルは婚約者と結婚式を挙げにインドに帰る。ハリーがどうするか、セージャルは誰と結婚するのか、これらはインドのロマンス映画が散々使い古してきたプロットであり、今更イムティヤーズ監督が踏襲するとは思わなかったが、大体予想通りの結末を迎えた。

 残念ながら、「Jab Harry Met Sejal」はイムティヤーズ監督の最高傑作とは言えない。実際、インド国内の興行収入は振るわなかったようで、ヒットの基準となる10億ルピーに達しなかった。

 イムティヤーズ映画のもうひとつの持ち味は、ロードムービー的な作りである。「Jab Harry Met Sejal」では映画の大半がヨーロッパ各地の都市で進行する。アムステルダム、プラハ、ブダペスト、リスボン、フランクフルトなどを転々とし、最後はインドで結末を迎える。あまりに移動が頻繁すぎていたために、十分な旅情が醸し出されていなかったが、それでも多くのインド人観客には目の保養となっただろう。

 イムティヤーズ映画の常として、音楽は非常に良かった。イルシャド・カーミルが作詞し、プリータムが作曲した歌の数々は、ハリーとセージャルの心情をよく代弁しており、映画を盛り上げていた。

 「Jaw Harry Met Sejal」は、ロマンス映画の名手イムティアーズ・アリー監督の作品で、やはりロマンス映画である。シャールク・カーンとアヌシュカー・シャルマーの共演第3作でもあり、期待は高かった。だが、これらの顔ぶれから期待されるような出来にはなっていなかった。

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