Malang

ヒンディー語映画界において、音楽重視の映画作りをしている映画人の筆頭と言えば、Tシリーズのブーシャン・クマールである。Tシリーズは元々、音楽レーベルであり、後に映画制作にも乗り出した。ただ、彼自身はプロデューサー業に専念しており、音楽以外は映画監督に一任しているようである。今や、TシリーズのYouTubeチャンネルは世界一の登録者数を誇っている。

 Tシリーズはヒンディー語映画界で一大勢力を築き上げているバット一家と相性が良く、共に多くの名作を生みだした。最近では、「Aashiqui 2」(2013年)の大成功が記憶に新しい。この映画の監督はモーヒト・スーリーであるが、彼もバット一家の一員である。

 モーヒト・スーリー監督の最新作が2020年2月7日公開の「Malang」である。主演は「Aashiqui 2」と同じアーディティヤ・ロイ・カプールと、「Baaghi 2」(2018年)などのディシャー・パータニー。他にアニル・カプール、クナール・ケームー、ヴァトサル・シェート、シャード・ランダーワーなどが出演している。音楽はミトゥンやアンキト・ティワーリーなど、複数の音楽監督による。やはり音楽が非常に良い映画だった。Netflixで鑑賞した。



 「Malang」とは「狂気」という意味である。舞台はゴア。12月24日に警察官を狙った連続殺人事件が発生する。その犯人として浮上したのが、麻薬関連の罪で5年の刑期を終えて出所したばかりのアドヴァイト・タークル(アーディティヤ・ロイ・カプール)であった。アドヴァイトは、「殺人警官」として恐れられるアンジャニー・アガーシェー(アニル・カプール)に犯行を予告し、3人目の警察官を殺したところで逮捕される。彼の動機は何か、それが徐々に明かされる・・・。こんなストーリーのクライム・サスペンスである。

 アドヴァイトが狙ったのは特定の警察官であり、その動機となったのは、恋人だったサラ(ディシャー・パータニー)を4人の警察官に理不尽な形で殺されたからである。アドヴァイトとサラの出会いや共に過ごした時間が随所に差し込まれる回想シーンで語られて行く。

 基本的には、この2人の恋愛と、それを突如引き裂かれた哀しみをベースにしており、モーヒト・スーリー監督が得意とする狂おしいロマンス映画の系統に仕上がっている。アドヴァイトは全てを捨てて旅に出たさすらいの人。サラも日々のルーチンワークに嫌気が差して自由を求めてゴアまで流れ着いた人。この2人がゴアで自由を謳歌する中で、妊娠や裏切りを経て、家族の大切さを再認識する。どこかで聞いたような人物設定や流れである。

 一方、アドヴァイトの4人目のターゲットとなる警察官がマイケル・ロドリゲス(クナール・ケームー)で、彼のキャラがこの映画で一番ひねってあった部分であった。

 ゴアという、インドでも特殊な土地で繰り広げられる犯罪劇で、外国人ヒッピーたちも登場すればレイブパーティーも出て来る。パナジの有名な聖マリア大聖堂もちゃんと使われるし、ドラッグも当然のごとく常用される。大方の人がゴアに対して抱いているイメージをそのままなぞったような感じだ。

 ロマンスやサスペンスの部分は平均点くらいで、後はゴアの雰囲気がプラスに働いていたが、やはりこの映画で一番良かったのは音楽だった。「Chal Ghar Chalen」、「Malang」、「Humraah」など、メランコリックなメロディーに狂おしい歌詞を乗せた、Tシリーズ印の歌の数々は、映画中に適切に差し込まれ、情感を数倍に増していた。またひとつ名曲が飛び出した。

 「Malang」は、「Aashiqui 2」などのモーヒト・スーリー監督の最新作。ジャンルはクライム・サスペンスになるが、ロマンスの要素も強い。Tシリーズらしい、音楽が飛び抜けて良い映画であるが、ストーリーは平均レベルである。

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