The Girl on the Train

記憶喪失は、古今東西の映画でよく使われるギミックである。インド映画でも、「Henna」(1991年)、「Kyon Ki…」(2005年)、「U Me Aur Hum」(2008年)、「Ghajini」(2008年)など、記憶喪失を扱った作品は多い。2021年2月26日にNetflixで配信開始されたヒンディー語映画「The Girl on the Train」も、記憶喪失の女性を主人公としたサスペンス映画である。




 監督はリブ・ダースグプター。「Michael」(2011年)で監督デビューし、「Te3n」(2016年)などを撮っている監督である。主演はパリニーティ・チョープラー。他に、アディティ・ラーオ・ハイダリー、キールティ・クルハリ、アヴィナーシュ・ティワーリー、トーター・ロイ・チョウドリーなどが出演している。英国人作家ポーラー・ホーキンスの同名小説を原作としており、同名の映画が2016年に米国で作られている。

 舞台はロンドン。弁護士のミーラー(パリニーティ・チョープラー)は、シェーカル(アヴィナーシュ・ティワーリー)と結婚し、妊娠したが、事故に遭って流産し、記憶喪失にもなった。以後、アルコール依存症となり、夫とも離婚して、孤独な毎日を送っていた。ミーラーは電車に乗ってかつてシェーカルと住んでいた家を眺めていたが、別の家にも注目していた。その家には、ヌスラト(アディティ・ラーオ・ハイダリー)が夫のアーナンドと幸せそうに暮らしていた。いつしかミーラーは、ヌスラトに自分を重ねるようになった。

 ある日、ミーラーは、ヌスラトが別の男と家にいるのを見て、浮気を疑うようになる。ヌスラトの家に押しかけるが、彼女は森に散歩に出かけていた。ミーラーは彼女を追いかけるが、その後の記憶がなかった。その後、ヌスラトが遺体で発見される。警察官のダルビール・カウル・バッガー(キールティ・クルハリ)はミーラーを第一容疑者としてマークし、捜査を開始する。ミーラーはダルビールから逃げながら、真犯人を捜し始める。こんな物語である。

 アルコール依存症かつ記憶に障害のある女性が、身に覚えのない犯罪の濡れ衣を着せられそうになるも、警察からの追っ手をかわしつつ、事件の真相に迫るサイコ・スリラーで、ヒッチコック映画のような雰囲気の映画であった。真犯人候補が何人か登場するのだが、順に否定されて行き、最後は驚きの結末となっている。

 ただ、このような映画では、単に結末にサプライズを持って来るだけでは不十分で、そこに至るまでのロジックが必要となる。「The Girl on the Train」でそのロジックがきちんと成立していたかというと疑問である。ミーラーは、偶然見つけたような小さなヒントから真相に迫る証拠を入手して行くのだが、あまりに偶然性が強すぎて、観客を置いてけぼりにする独りよがりな脚本になっているように感じた。

 だが、パリニーティ・チョープラーの演技は信頼に足るものであった。元夫との離婚後に、その悲しみを克服できずにアルコール中毒になった女性を演じていたが、彼女のふくよかな顔にあまりそういう苦痛が出ていなかったのが難点であった。しかしながら、普段は明るい役柄を演じることの多いパリニーティが、ダークな役に挑戦し、よく演じ切っていた。脇役扱いになるが、他の2人の女優、アディティ・ラーオ・ハイダリーとキールティ・クルハリもそれぞれの役割をきちんとこなしていた。

 「The Girl on the Train」は、同名の英国小説を原作にしたヒンディ語映画であり、記憶喪失を扱ったサイコ・スリラーである。二転三転する展開はスリリングで、結末も大いに驚かされるものだが、それが説得力をもって語られていたかというと少々の疑問も感じる。だが、主演パリニーティ・チョープラーは見ものである。

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