放送禁止用語

ンド映画が長年抱えている問題のひとつに検閲問題がある。日本に映画倫理委員会(映倫)があるように、インドにも映画の認証を行う組織があり、それが中央映画認証委員会(CBFC)である。映倫が任意団体であるのに対し、CBFCは中央政府情報放送省の下にある政府機関である。インドにおいては、CBFCから認証を受けなければ、いかなる映像作品(映画、テレビ番組、コマーシャルなど)も上映できない。映画上映前に数秒間、映画名や上映時間などが記された書類が映し出されるが、あれがCBFCの認証になる。

 インドにおける認証制度は、しばしば表現の自由や創造性と激突して来た。性的描写や暴力描写は一貫して規制の対象となって来ているが、それに加えて他国ではあまり問題にならないような事柄についても、CBFCから指導が入ることがある。代表例が動物の使用である。動物愛護活動家の勢力が強いときには、極端なことを言えば、映画中に動物を使用できないということもあった。記憶にある中でその被害に遭ったのは「Rang De Basanti」(2006年)だ。タイトル曲「Rang De Basanti」が流れる場面で主演のアーミル・カーンが乗馬をするシーンがあったのだが、関係機関から必要な許可を受けていなかったということで、CBFCからカットを求められた。ただ、この極端な措置は一時的なもので、現在、動物を使ったシーンのある映画では冒頭に必ず「撮影中に動物を虐待しませんでした」などの注意書きが入る程度に留まっている。

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2015年2月19日 | カテゴリー : ブログ | 投稿者 : arukakat

2015年デリー州議会選挙

リーを去って2年が過ぎ去ろうとしているが、デリーのことがなかなか頭から離れないものだ。ネット上ではリアルタイムにニュースが見られるし、タイムス・オブ・インディア紙のデリー版を講読していることもあって、3日遅れでデリーの情報が紙媒体で入って来る。情報だけはデリー在住の人々にそれほど遅れを取っていないと自負している。しかし、物理的にデリーに身を置いていないことのハンディは大きく、デリーが今正に感じている熱気や興奮、デリーの息吹のようなものは久しく感じられていない。

 僕がデリーに住んでいた11年7ヶ月の間にもデリーは大きな変化を経験したが、僕がデリーを去ってからの2年間には、それ以上の変化があったように感じられる。何しろこの短い間に州議会選挙が2回も行われたのである。さらに、その2度の州議会選挙の合間に下院総選挙が1回行われている。そして、選挙ごとにデリーの政治状況は目まぐるしく変わった。それが隔世の感を感じさせている。

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2015年2月16日 | カテゴリー : ブログ | 投稿者 : arukakat

モデル・ヘリテージ・サイト

ンド政府が国内の重要な遺跡にEチケットを導入する計画のようだ。訪問日の60日前から予約が可能で、有効期間は2日。おそらく事前にクレジットカードなどで支払いを済ませ、当日はプリントアウトした紙を入り口で見せるだけで入場できるというシステムであろう。入場券売り場の混雑緩和などを目的としていると思われる。ヴィザにもEヴィザのシステムを導入したばかりであり、モーディー政権はこの手のギミックがお好きのようだ。

 Eチケットの導入と同時に、国内25ヶ所の遺跡を「モデル・ヘリテージ・サイト」に指定するという発表もなされた。これに指定された遺跡には、車椅子用のスロープ、標識、飲料水飲み場、監視カメラ、Wi-Fi、通訳センターなどが設置されると言う。

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2015年1月5日 | カテゴリー : ブログ | 投稿者 : arukakat

【告知】NHKラジオ深夜便に出演

NHKラジオのラジオ深夜便ないとエッセーに出演する。12月15日(月)から18日(木)まで、四夜連続で時間は午後11時台。各10分。番組の特性上、インタビュアーとのやり取りではなく、一人で淡々と独白する形式。生放送ではなく事前収録。話すテーマは以下の通り:

  • 第一夜 12月15日(月) 最近のインド映画
  • 第二夜 12月16日(火) インド映画の魅力
  • 第三夜 12月17日(水) インド映画出演体験記
  • 第四夜 12月18日(木) インド映画専門映画館設立の夢

 「インド映画」と言っても、ヒンディー語映画の話が中心。現在「チェイス!」が公開されているし、今後「ミルカ」「女神は二度微笑む」「フェラーリが運ぶ夢」などの公開が控えていることもあって、それらインド映画の宣伝にはとてもいいタイミングだった。しかし、選挙などの影響で、年明けの放送になる可能性もわずかながらあり、時制が複雑になってしまうため、「現在こんなインド映画が公開されています」「今後こういうインド映画が公開されます」という話は一切しなかった。と言う訳でその点はご了承いただきたい。

投資利益率で見るヒット映画

在、ヒンディー語映画の歴代興行収入第一位は「Dhoom 3」(2013年)となっている。国内興行収入だけでも28.4億ルピー、タミル語やテルグ語の吹替版を含めた世界での興行収入は50億ルピーを越える。今年12月5日には日本でも封切られることになっており、さらに数字を伸ばすだろう。

 だが、この数字は制作費や映画の劇場公開までに費やされるその他の諸経費を無視している。もし興行収入10億ルピーを稼ごうとも、制作その他に10億ルピー以上を掛けていたら、赤字なのである。映画の興行的成功を判断する際、収支を照らし合わせて考える必要がある。ちなみに「Dhoom 3」の制作費は12億ルピー前後のようだ。

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2014年10月6日 | カテゴリー : ブログ | 投稿者 : arukakat

【告知】インド映画の楽しみ方@ナマステ・インディア

年9月に東京の代々木公園で開催されているナマステ・インディア。「日本最大級のインド文化イベント」がキャッチフレーズだが、実は世界的にもトップクラスのインド文化イベントに成長したらしい。1993年から開催されているようだが、実は僕は一度も行ったことがない。インド留学前は存在を知らなかったし、インドに住み始めてからはこの時期日本に帰国することがなかったため、ずっと行きそびれていた。永久帰国後も、東京在住ではないので、気軽に足を伸ばせるイベントではない。

 今まで全く縁のなかったナマステ・インディアだが、今年はセミナーの講師として呼んでいただけたため、ようやく体験することができそうだ。「~できそうだ」と言うのは、一時デング熱の問題で開催が危ぶまれたからだ。現にナマステ・インディアより前に代々木公園で開催予定だった同様の異文化体験イベントが中止に追い込まれている。しかし、ナマステ・インディアの主催者はデング熱に屈することなく開催決行を決め、僕の講演も予定通り行われることになった。

 9月21日(日)の午後1時から、エア・インディア・セミナーハウスにて、「インド映画の楽しみ方」という題で講演を行う。

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2014年9月20日 | カテゴリー : ブログ | 投稿者 : arukakat

モーディー首相のティーチャーズ・デー講演

レーンドラ・モーディー首相は演説力の高さで知られた政治家だが、最近までグジャラート州の州首相だったこともあり、今まで彼の演説を見たり聞いたりすることはなかった。だが、首相に就任してからは国民に向けて演説をする機会が増えた。先日5日間の日程で来日し、京都と東京を訪問する中で、安倍晋三首相や天皇陛下を始め、多くの日本人と交流し、様々な場所で演説を行ったが、僕はそれらの都市に住んでいないこともあって彼に接する機会を得られなかった。しかしながら、モーディー首相はテクノロジーを積極的に活用する政治家でもある。彼のTwitterは頻繁にツイートがあるし、彼の演説はすぐにYouTubeにアップロードされる。今年8月15日の独立記念日スピーチもアップロードされていたので、視聴させてもらった。前任のマンモーハン・スィン首相とは正反対の、力強く人間味のあるスピーチだった。ヒンディー語で演説してくれたことも嬉しかった。彼はヒンディー語の母語話者ではないのだが、彼の演説はヒンディー語の一学習者としても非常に参考になる。こういう首相が登場してくれると、ヒンディー語を学んだ甲斐があったというものだ。

 ところで、9月5日は僕の娘の誕生日であったが、インドではティーチャーズ・デーでもあった。第2代大統領サルヴァパッリ・ラーダークリシュナンの誕生日が由来となっている。「3 Idiots」(2009年)でチャトゥルが爆笑スピーチを行ったのもティーチャーズ・デーだった。この日、学校などでは、学生が先生に感謝するため、映画で描写されたような行事が行われる。

 この日、モーディー首相が全国の子供たちに向けて講演と質疑応答を行うことになった。これについては、ティーチャーズ・デーの政治利用とか、強制するのはいかがなものかとか、批判の声も聞かれたのだが、YouTube上にアップロードされた動画を見る限り、モーディー首相の人柄や考え方がよく表れていて、インドにとって非常にいいイベントになったのではないかと感じた。ティーチャーズ・デーに子供たちとこのようなインタラクションをしたのは初代首相ジャワーハルラール・ネルー以来だと言う。

 ティーチャーズ・デーということで、彼は、インドの教師についての話から話し始めた。彼は、インドにおいて教師の地位が低いこと、国の優れた才能が教師になりたがらないことなどに懸念を表明しており、その解決策として、企業などに勤める高学歴の人が週に1コマでも最寄りの学校で授業を持つことを提案していた。どこまで本気かどうか分からないが、モーディー首相の在任期間中、かなり大きな教育改革も行われそうな予感がした。

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「インド式計算法」の真実

前、「これでインディア」において、インド式数学の謎と題して、一時期日本で流行したインド式計算法について書いたことがある。現在日本でインド式計算法はそれほど話題になっていないと思うが、「インド人は数学が得意」という固定観念は日本人の脳裏に根強くこびりついてしまったように感じる。この記事でも書いたが、いくら何でも「インドでは道端で野菜を売ってるおっちゃんまでもが数学の天才」とか、そういうことはありえない。計算力のみで「数学が得意か否か」を計るならば、日本人の平均的計算力の方が絶対にインド人よりも勝っている。それは識字率の違いを見ても明らかである。

 ところで、ザ・ヒンドゥー紙の2014年9月3日付け記事にNothing Vedic in ‘Vedic Maths’という論考があり、インド式計算法についてさらに深い洞察を得ることができた。日本で話題になった「インド式計算法」は、本国インドでは「ヴェーダ式数学(Vedic Mathmatics)」と呼ばれている。日本でもそういうタイトルの本が出ていた。ヴェーダの時代から綿々とインドで受け継がれて来た魔法のような計算法、ということで、インド式計算法の神秘性をさらに高めるキーワードになっていたと思う。この論考の主な目的は、題名からも分かる通り、「ヴェーダ式計算法はどのヴェーダにも記載されていない」という事実を知らしめることである。よって、主に名前に問題があることを指摘するものだったが、記事の中には、日本人が「インド式計算法」について抱いている誤解を解く手掛かりもいくつかあった。

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2014年9月6日 | カテゴリー : ブログ | 投稿者 : arukakat

デリーの月別出生数

ンドでは時期ごとに出生数が異なると言われて来ていた。特にインド亜大陸の大部分の地域で最も気温の高くなる酷暑期(4-6月)に生まれる子供の数は少ないとされている。今までは伝聞だったのだが、最近それを裏付けるデータが手に入ったのでここで報告したい。2014年8月25日付けタイムズ・オブ・インディア紙デリー版一面に、「Both births and deaths drop in Delhi summer」という記事があり、その中で月別の出生数を示した表が掲載されていた。それが以下のものである。

デリーの月別出生数

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2014年8月28日 | カテゴリー : ブログ | 投稿者 : arukakat

インドの姉弟文化

る8月10日、インドではラクシャーバンダン祭が祝われた。ヒンドゥー教の数ある祭りの中でも、兄弟と姉妹の絆を確かめ合うことを目的としたユニークな祭日で、この日、女性は兄弟の手首に「ラーキー」と呼ばれる紐を巻き、健康と幸福を祈る。ラーキーを巻かれた男性は、その女性を守る義務を請け負うと同時に、返礼として小遣いなどをあげなければならない。兄弟の多い女性はこの日、市場で安価に手に入るラーキーをばらまき、荒稼ぎをするのである。

rakhi

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2014年8月13日 | カテゴリー : ブログ | 投稿者 : arukakat